2018年4月23日月曜日

消費税と住宅取得

消費税が増える!


日本に初めて消費税が導入されたのは、1989年4月です。当初は、消費税率も3%でした。その後、1997年4月に5%へ、さらに2014年に8%へと税率が上がりました。そして、衆議院選挙の結果を受け、2019年10月に消費税10%となることが確実視されています。


景気動向と増税時期や税収の使用目的が議論されるようになり、もはや増税を疑う人はいないのではないでしょうか。また、前回の3%分の増税に比べれば、次回は2%分の増税で、それほど影響がないという人もいます。


しかし、過去の消費税率アップのデータを見ると、住宅に関しては単純なものではありません。現実的に市況に大きな影響をもたらしたのは、1997年の2%アップの時でした。


わずか2% といっても、たとえば2,000万円の住宅であれば40万円です。この金額が消費税アップの日付とともに消えてしまうと思えば、無駄な出費は避けたいと思うものです。


消費税が影響


ところで住宅には、持家、貸家、分譲と、さまざまな形態があります。


分譲住宅は、完成した土地建物の売買契約によって成立しますので、消費税も単純です。そのかわり、より早く企画し工事しておかなければなりません。たとえ駆け込み需要があっても、住宅着工という数値では表われません。


また、貸家はあまり消費税アップの影響を受けにくい市場です。それは、消費税が上がっても、同様に家賃を上げれば、あっという間に回収ができるからです。消費税アップにより物価が上がるのもよくあることです。


それに対して、持家は消費税の影響を大きく受けます。中でも、工事費が大きくなる建替えでは、負担額も倍増します。現実に前回の2014年の消費税アップでは、初めて家を建てる人よりも、建替えの人が動いたという分析もあります。


また、持家で建てられる注文住宅では、請負工事契約によって建設が進められます。この時、契約が消費税アップ前でも、工事の途中で消費税が上がる可能性があります。工事の日程は、天候などの不可抗力も大きく影響します。完成引き渡し時を、消費税アップの日程とすると、多くの問題が発生しかねません。駆け込み需要が発生すると、なおさら工事が遅れることも予想されます。


このため、請負工事契約では、経過措置がとられています。


経過措置とは、消費税アップの半年前までに請負契約をした場合には、完成引渡しが消費税アップの期日を過ぎても、8%のままにできる措置です。消費税10%が導入されるのは2019年10月からとなりますので、その半年前の2019年3月までに請負契約をすませておくと、完成・引渡しがずれ込んでも消費税は8%となります。


とはいえ、請負工事契約をすぐに行うことはできません。間取りや仕様を決め、法的な確認もすませるには、数ヶ月前から検討しておかなければなりません。消費税への準備は、なるべく早く始めるに越したことはありません。


消費税以外の条件


消費税のことだけを考えれば、たしかに増税される前に家を建てておくのが得です。しかし、消費税のアップと同時に施行される住宅の税制もあります。国の施策としても、消費税をあげることによって、景気が悪化してしまうのでは元も子もありません。急激な住宅着工数の低下を、招かないための施策が用意されているのです。その代表が、住宅ローン減税と住宅資金贈与に関するものです。


前回、2014年の消費税アップでは、住宅ローン減税の幅が拡大されました。より高額の家を求め、高額のローンを組んだ人には税制の優遇があります。


建物には消費税がかかりますが、土地には消費税がかかりません。一方、住宅ローンは土地建物の総額で決まります。つまり、土地代が高い都市型の家を求めた人に有利な、減税対策となっていました。これからの立法により、同様の対策が取られる可能性もありますが、現状ではまだわかりません。


それに対して、住宅資金贈与については、消費税率が10%になった場合という条件がつけられていたことで、消費税アップの延期と同時に延ばされていたものです。


住宅資金贈与


住宅資金贈与とは、若い世代の住宅取得という特別な支出に対して、親もしくは祖父母が資金を出してあげることに税制を優遇するものです。比較的裕福な高齢者層の資産を、若年層にスムーズに移行するための制度です。これによって、消費が刺激され、より良い経済活動を導こうとしています。


現行では、1,200万円までの住宅資金贈与には税金がかかリません。その住宅資金贈与が、消費税アップ後1年の間には、3,000万円まで控除額が増額されることになっています。その差額は、1,800万円もあります。


この差額分1,800万円を純粋に贈与として受け取れば、それだけでも500万円※ほどの贈与税を納税する必要があります。消費税どころの金額ではありません。



さらに、住宅資金贈与を行わないことで、親や祖父母の資産が残ったままとなり、結果的に相続税が発生することも考えられます。こうした相続税に関する法律も、すでに2015年に大きく変更されました。


消費税と相続税


2015年の相続税の控除額変更により、課税対象額が大幅に引き下げられました。これによって、これまで相続税がかからなかった人も、広く対象者となります。2014年と比較すると、相続税対象者は1.8倍に増え、5人に1人の割合にまで高まりました。


中には対象となる課税対象額が、4,000万円台なかばでも、相続税がかかるケースもあります。相続税は資産家だけが対象と思いがちですが、決してそんなことはありません。極めて身近な税となったのです。


相続税の課税対象額には、土地家屋、現金や有価証券など、すべての資産が入ります。親の家はもう古くなっているので、資産価値は0だと思っても、固定資産税の対象額分は必ず残され、200~300万円が計上されます。家屋は、再建築した場合の価格の20%は、残されることになっているのです。


土地の評価は路線化価格で決まるか、家屋と同じように固定資産税を基準として、倍率をかけることで決まります。大都市圏では土地価格が高く、地方では土地の面積が大きいので、想定以上に土地家屋の対象額は膨らみます。


それに現金や貯金、有価証券などを2~3,000万円持っていれば、すでに十分、相続税の心配をしておかなければならないといえます。住宅資金贈与などで、親の相続税の対象となる資産を、子や孫の資産として移行しておくことは、相続税対策になることなのです。


ところで、こうした贈与税や相続税対策が必要となる家庭で、住宅資金贈与が使えるのであれば、今回の消費税アップであわてて駆け込みの契約をするのは得策ではありません。消費税が上がるのを待ち、住宅資金贈与の枠を使う方が得になります。


消費税の着目ポイント


相続税と住宅は、切っても切れない関係にあります。とくに空き家率が高くなっている現状を考えるとなおさらです。相続発生後も続けて住む人がいるか否かで、相続税が大きく変わる税制が定められています。


次の世代に住む可能性があれば、相続税の軽減はありますが、なければしっかり税金がかかる税制になっているのです。その判断は、子世代の住んでいる家によって判断されます。


同居していれば明確で、親が所有する土地課税評価額の80%が控除される小規模宅地の特例が適用されます。その適用される土地面積も、2015年に240㎡から330㎡に拡大されました。


ただし、同居していない場合には、少し複雑になり、子世代が自己所有の住宅を持っていると、親の家には戻らない可能性が高いと判断されます。したがって、持家を持っている場合には、80%の控除はありません。土地の評価額がまるまる、相続税の対象となるのです。


この場合、子世代の持家は本人ではなく、配偶者が持っている家でも適合されません。たとえばマンションであっても持家であれば、夫婦のどちらの親からの相続でも、控除は受けられないということです。

それは、自分で家を手に入れる時には、親の資産状況と相続の問題を確認しておく必要があるということにつながります。


逆に、同居を前提とした二世帯住宅や三世代住宅では、判断が緩和された部分もあります。2015年の改正以降、完全分離型の二世帯住宅でも、土地の課税額は上限の330㎡まで適用されるようになりました。


これまでは、相続税対策といえばアパート建築など、大きな資産家が対象でしたが、これらを考えると一般の人でも、相続税対策が必要であり、建替えは有効な手段となります。最大限に活用するためには、消費税アップの後に住宅資金贈与を利用して二世帯住宅を建てることです。もしくは、住宅資金贈与がなければ、消費税アップの前に建替えすることも有用です。


消費税と金利


最後に、消費税のアップの負担分を、金利の差で計算してみます。


たとえば、金利1.1 %、35年ローンで、2,000万円を借り入れて返済すると、月々の返済額は57,394円となります。この時の総返済額は、24,105,235円です。


2,000万円の消費税アップ分2%は、40万円です。総返済額が40万円増えて、2,450万円となる金利を計算すると、1.2%相当となります。



つまり、住宅ローンの金利が0.1%上がるだけで、消費税2%相当の総返済額が増えるということです。住宅ローンの金利は、国債の長期金利にしたがって変動していますが、マイナス金利の発動など、現在の金利が最も低い時期の金利といえます。この金利が0.5%上がれば、消費税10%相当分の総返済額が増えるということです。


消費税アップによる負担増も大変ですが、金利の変動にはもっと注意が必要です。親に相談ができないのであれば、経過措置を利用して、かつ金利の安い時期が、最も住まいづくりに適した時期です。


また、親の相続税をしっかり考えながら、一緒に家の計画を練るのであれば、じっくり計画して消費増税後1年内に進めるのが良いでしょう。


いずれにしても、先に計画を立てなければ、時期の選択をすることはできません。ゆっくり家族で、おうちのはなしを進めてみてください。

2018年4月16日月曜日

窓が家を決める

屋根と壁と窓


世界中のどの街の風景を見ても、なんとなく風景に馴染んだ家々があることに、落ち着きを感じます。そして同時に、その街それぞれの個性を感じます。


こうした家々の風景の印象を、私たちはどこで感じているのでしょうか。それぞれの家の形状と色と素材の差であると思われます。


家の屋根と壁は、家を人が暮らす器にするために不可欠なものです。そして、街によって、さまざまな形状の屋根があり、茅葺や板葺き石葺屋根は世界中にあります。また、その地域でつくられた瓦こそ、地域の個性を引き立てる要素になっています。


壁には形状の違いこそ見えませんが、素材と色によって、街の個性を感じられます。


そして忘れてはならない大きな要素のひとつが、窓です。場合によっては、窓の大きさや形状、開き勝手で、おおよその地域がイメージできます。窓は家を構成する、最も大切なものなのです。


窓が笑っている家


家の価値を判断するのにも、じつは窓は大事なポイントになります。それを象徴する言葉が、北米の人たちが既存住宅を選ぶ時に、語られています。


良い家は、『窓が笑っている』というものです。


 既存住宅を購入して、手入れをして価値を高め、資産形成をする北米のライフスタイルから生まれてきた格言と思われます。良い家を選ぶのには、なによりも窓を見れば判断ができるということです。



屋根や壁は、多少傷んでいても、自分たちの手で補修するのは比較的容易にできます。しかし傷んでいる窓を補修したり取り替えるのは、簡単なことではありません。窓枠に手を加えれば、躯体や水仕舞いにまで影響が及びます。しっかりとした窓がある家であれば、間違いなく立派な家に生まれ変わってくれます。


『良い馬を見極めるのには、歯を見ればわかる』といわれるのと同じ感覚で、良い家を見極めるのに窓を見て確認しているのです。


また、窓が笑っている家には、幸せな家庭が築かれているというイメージもあります。


窓辺をしっかりウィンドウトリートメントで飾りつけ、大切に家を扱っている家族が住んでいる家のイメージがあります。窓に装飾的なバルーンシェードが掛けられていれば、シェード下部のふくらみが、人が微笑んでいる口元の曲線とイメージが重なります。


外から窓を眺めれば、まさに窓が笑っているように見えるのです。


それは窓が、インテリアデザインとしての大事な要素であると同時に、エクステリアのデザインとしても大きな影響を与えているという意味でもあります。


重ねて、家を考える上では、窓は最も大切な部位の1つなのです。



窓の性能とデザイン


あらためて、家にとって窓がどれだけ大事な要素であるかを考えてみましょう。


家の価値を考えるときには、性能と機能とデザインの3つの要素があります。窓は、このすべての要素で大きく関わっています。


そもそも家を強固なシェルターとして考えるのであれば、堅牢な壁を立てて、通風や採光を必要とはしません。快適さに通じる通風や採光という機能を求めるからこそ、窓を設置しようとします。


その反面、窓があることによって熱は出入りをし、冬は寒く、夏は暑い家になってしまいます。壁の断熱性能を高めるのは比較的容易であり、結果的には家の性能は、窓の性能によって左右されることになります。


さらに窓は、家の外観にも、大きな影響を与えています。私たちが家のデザインの様式を判断するのに、窓は屋根と同じくらい大事な要素です。


たとえば、小窓が対照的(シンメトリー)に並ぶと洋風に感じます。その窓脇に開きの雨戸があるなど、少し装飾されているとなおさらです。逆に、大きな掃き出し窓があると和風の家になります。縁側があれば決定的な和風デザインです。



これらが組み合わさって、たとえば洋瓦の屋根に掃き出し窓が設置されれば、オリエンタルな洋風の様式となり、逆に和瓦に小窓が設置されると、大陸系アジア、つまり中華風のイメージが濃くなります。モダンな家には、ガラス面を大きくするか、あるいは逆に壁面を大きくするなど、やはり窓によってデザインできます。


さらに、窓が壁よりも凹んでいると、歴史的な家の雰囲気が醸し出され、壁から少しだけ窓枠が凸に収められていると、現代の標準的な量産住宅のデザインに感じます。



窓と住宅デザイン


これだけ住宅の外観デザインに影響を与える窓です。家を設計するときには、押さえておきたい大事なポイントがあります。まずは、なによりも、窓の設計は内からだけではなく、外からも同時に考えておくことです。


窓は部屋の快適性やインテリアにも、大きく影響を及ぼします。通風や日当たりも、窓の開け方次第で、部屋の環境も変わってます。しかし、内側からの窓を考えた家は、窓の配置や大きさがバラバラになってしまい、外観は決して良いものにはなりません。


そのような事例で多いのは、外観の窓を見ると、洗面所やトイレ、浴室などの配置がすぐにわかってしまうことです。夕方などに電気のつき方を見れば、どのような生活をしているのかもばれてしまいます。


その点、洋風の家では規則正しく同じような窓が並んでいて、家の中の間取りや生活はわかりにくくなっています。ですから、窓の設計は内からだけではなく、しっかりと立面図でも検討しておくのが良いでしょう。


さらに、2階建以上であれば、上下階の窓の位置を揃えることが、外観を崩さないためのポイントです。外観の窓の配置が良い家は、上下階の柱の位置も揃っているので、構造の性能も確保されることになります。このようなポイントをチェックするだけでも、設計者のデザイン力を測ることができます。


同じ2000万円の家でも、外観デザインによって、良ければ3000万円にも見え、悪ければ1500万円にも見えます。その差は2倍以上にもなりかねません。どうせ外観は道路側しか見えないからと諦めずに、デザインは大事にしておきたいものです。


窓と性能


家には窓があることで、景色が見え、光が届き、風が抜けるという快適さを得られます。しかし、建物の窓というのは、考えようによっては壁に開いた大きな穴のようなものです。「窓」という文字の中にも「穴」があります。穴があれば、熱は逃げ、防犯の心配もしなければなりません。



当然のことながら、壁にあいた穴は小さい方が有利ですが、四季の豊かな日本では大きな窓にしたくなるものです。このようなジレンマを解決するには、窓の性能を高めるしかありません。


ところで窓は、簡単にいえば窓枠とガラスという、たった2つの構成要素でできています。特にガラスが発明されることで、光や視線を通しながら、熱の出入りを抑えることができる窓になりました。

窓ガラス


ガラスは、現代になって大きく進化し、種類も増えました。一般的なフロートガラスや破損しても飛び散りにくい網入ガラスから、さらに機能を高めたガラスがあります。高熱処理をして割れにくくなった強化ガラスや、ガラスの間に強くて柔軟性のあるフィルムを圧着させた合わせガラスがあります。この中間フィルムを、より厚く強靭にすると防犯ガラスになります。


また、ガラス面に特殊な金属膜をコーティングして、熱の放射を起こしにくく遮熱性を発揮したLow-Eガラスもあります。


その上、これらのガラスを、間に中空層を持たせて合わせることで複層ガラスができます。しかもさまざまな機能ガラスを組み合わせると、窓の性能はさらに高まります。


たとえば遮熱性の高いLow-Eガラスを、室内側に使うと、暖房の熱を逃しにくく断熱性・保温性を発揮し、太陽の熱を取り入れる、高断熱複層窓となります。寒さが厳しい地域に向いた窓です。


同じ組み合わせでも、Low-Eガラスを室外側に使うと、夏は日差しを遮り、冬には暖房熱を反射して逃がさない、遮熱複層窓となります。西日のあたる窓などに適しています。もちろん、合わせガラスや強化ガラスと組み合わせることもできます。


今では、さらにその上をいく、中空層を2層にした3層ガラスもあります。



窓枠


どんなにガラスが進化しても、そのガラスをはめ込むための窓枠がなければ、窓はできません。窓の性能には、窓枠も関係があります。


昔からの木の窓であれば、比較的熱は伝わりにくいのですが、隙間風を抑える気密性に問題があります。


一方、一般的に使われているアルミは、とても熱が伝わりやすい材料です。せっかくガラス面で熱を遮断しても、窓枠が熱を通すとエネルギーロスだけではなく、結露の問題も発生します。


この窓枠の技術も、大きく進んできました。窓枠の材料としては、木材とアルミに加えて、樹脂の窓枠が一般的になりつつあります。樹脂は熱を伝えにくいので、窓枠にするのは最適です。そして、これらの窓枠の材料も、室外側と室内側で組み合わせることができます。


たとえば、雨風や太陽の紫外線にさらされる室外側にアルミを使い、室内側には断熱性の高い樹脂を使うというような例です。



窓を選ぶ


もちろんこうした窓のほとんどは、信頼のある住設メーカーが作っているものです。その意味では、建てる家の品質は大手メーカーでも地域の建設会社でも変わりません。


また、既存住宅でも、古い窓枠の一部を利用しながら、高性能ガラスを入れた障子を、リフォームで入れ替えるだけでも、家の性能が向上することができます。


しっかりと窓のことを知っておくと、家づくりも変わります。そして快適な家の中で、家族が笑う家になることでしょう。

2018年4月9日月曜日

モノを収めるコツ

モノがあふれた暮らし


家は空間があるだけでは暮すことはできません。それぞれの部屋に、さまざまなモノがあってはじめて暮らしもなりたちます。


それにしても、家にはどれだけのモノがあるものなのでしょうか。下にあるのは、家を新築して1年経つ家庭に、どれだけの所有物があるかを調査したデータです。



想像以上の割合でモノがあるものです。洋服ダンスや食器棚・本箱などは、持っていない家庭を探す方が大変なほどです。


およそ半数の人が造りつけの収納を設置しているのにもかかわらず、やはりタンスや食器棚・本棚はあります。でも、これだけ多くのモノがあることは、生活が豊かな証拠でもあります。


おそらく、日本は世界の国の中でも、家庭の中にモノがたくさんある国に違いないでしょう。日本は世界の国々が先進国として認め、所有をかきたてるだけの商品開発力もあります。さらに、それを買えるだけの経済力もあります。


また、日本には文化的な要素もあります。たとえば「もったいない」という文化を持つ国だからこそ、物を大切にして残しているといえます。それだけではありません。


食器などは、そばやうどんを食べる時と、ラーメンを食べる時、もしくはスープを飲む時と味噌汁を飲む時で器を変えて、食を楽しみます。この食文化の違いが所有している食器の数の違いを生み出します。間違いなく世界の中でもトップクラスの食器の量があるでしょう。


モノのある場所


では、こうしたモノの数々は、どのように収納されているのでしょうか。その答えも、同じ調査の中にあります。





このデータからは、収納されずにあふれ出た物が、部屋の中に雑然と置かれていることが見られます。


しかも、このデータは長年住まわれている住宅での状況ではありません。新築して暮らし始めてから1年目の家庭のデータです。きっと建てるまでは、新しい美しい暮らしを夢見ていたはずですが、この現実を見ると違うようです。


確かにすべての収納を確認して家を計画し、暮らし始めているわけではありません。さらに買い足してゆくものもあります。捨てるのが追いつかなければ、モノは増える一方です。衣服や靴などは、消耗品として買いますが、少しでも使えると思うと、捨てることは後回しになってしまうこともあります。


また日常的に使うモノほど、すぐ次に使うことを考えると、いちいちしまうことが、つい億劫になることもあります。せっかく収納を作っても活かされません。そのような実態を感じられる調査結果になっています。


残念ながら収納を増やせば増やすほど、収納する物も増えるものです。家に必要な収納の問題は、単純に収納量を確保するだけの問題とは思えません。


家の収納を上手に使いこなす術とは、どのようなものでしょうか。



誰がモノを増やしているのか


それにしても、どうして生活の中にはこんなにもモノが多いのでしょうか。それほど意識していなくても、いつの間にか、増えてしまっているように感じます。


毎年のように、少しずつ新しい機能が追加された家電製品が発売され、まるで古い製品を持っていると型落ちしているかのように感じさせられます。


まさに、モノ消費の文化の渦の中に巻き込まれている感じです。


でも、かならず誰かが決断をして、これらのモノが増えているはずです。少し冷静になって、一度、誰が欲しがったものなのかを確認して見る必要があるかもしれません。


たとえば子どものいる家庭では、子どもの物は驚くほど増えてゆくものです。洋服だけでも成長に合わせて、買い替えてゆかなければなりません。わずかしか履いていないのに小さくなった靴は、捨てるのにもったいなく感じるものです。また、知育のためのオモチャは、贈られることを含めて年々増加する一方です。でも子どものモノは仕方がないとしましょう。


子どもと同様に物を増やしているのは、父親であることが多いようです。このような意見は子育てママさんのグループインタビューで聞かされました。物を捨てることも、男性の方が女性よりも不得手であるといいます。さらには、男性の方が衣装持ちであるケースも多く見かけられます。


収納術などの話題は、女性誌などでも多く取り上げられていて、女性が興味を持つ話題のように思えます。たとえ女性がモノを片づけるのが得意であっても、モノを増やす男性がいては、やはり収納の問題が残ります。


日本の家の収納


そもそも日本の家は、それほどモノに溢れる家ではありませんでした。


数々の便利なモノが、日本人の生活スタイルを大きく変えたのです。


家具を置かなければインテリアが完成しない洋間とは違い、和室は家具がなくてもデザインが整っている空間として、欧米の人たちの目を引いたこともあります。


そして日本人には、四季折々に節句などの室礼を部屋に飾り楽しむ文化がありました。桃の節句や端午の節句などに、人形飾りを出してきて設えます。こうしたライフスタイルを支えていたのは納戸や蔵です。


ところが洋室が普及するにつれて各部屋には目的が生まれ、モノがたくさん置かれるようになります。家族の個室はその代表です。


この納戸と個室のライフスタイルの違いは、いわば集中収納と分散収納の違いです。


集中収納を手に入れるのには、基本的には間取りから考えなければなりません。一方、分散収納は家具によって対応することができます。そして、さまざまな収納家具が売られています。 


どちらにしても、住まいの収納を考えるときには、先に集中収納をしっかり確保しておくことから始まります。


個人に任せた分散収納よりも、集中収納では、衣替えのような家族のイベントをつくることで整理する機会が生まれる利点もあります。ただし、手を入れない蔵や納戸には、厚く埃をかぶったモノが鎮座することもあります。


収納の場所「クラ」


家に集中収納があると、なによりも暮らしている部屋が少しでも片づきます。たとえ室礼を楽しむのではなくても、集中収納はかならず役立つと思われます。


集中収納といえば、その代表は蔵です。じつは、日本語で「クラ」に使われる漢字には、「蔵・倉・庫・座」の4つがあり、それぞれの文字が集中収納としてのイメージを表しています。


「蔵」は草かんむりの下にあり、土に固められた土蔵のイメージで、宝物などを隠す場所です。たとえば家の中では床下につくる収納です。


「倉」は高床の屋根の下につくる米倉のイメージで、穀物を貯蔵する場所です。家の中では小屋裏につくる収納です。


これらの集中収納は、該当する床階の2分の1以下であれば床面積には計算されないルールになっています。その条件は、天井高を1.4m以下にすることです。また、同様に1.5m以下の天井高であれば、税法上も面積には算定されない空間となります。


「庫」は文字を見た通りにガレージのイメージで、製品などを置く場所です。このような場所を好むのは男性であり、収集してきた物に囲まれて、至福の瞬間を過ごす場所になることもあります。


ガレージについても、家に組み込めば延べ床面積の5分の1までの面積が緩和されます。つまり、定められている容積以上の家が建てられるのです。


床下・小屋裏・ビルトインガレージの収納は、居住空間を狭くしなくてもつくれる集中収納となります。

「座」は最後の「クラ」で、胡あぐら座の「クラ」です。物があるべきところにあることを表しています。世界の屋根と言われるヒマラヤの語源も、「雪の座」という意味です。


例えば、壁に絵画を掛けていれば、その壁は絵のあるべき場所としての「座」となります。現代流にいえば、「座」は見せる収納と考えても良いかも知れません。


節句の時に、人形飾りを床の間の前に置くのは、まさに「蔵(くら)」から出して「座(くら)」に置くようなものです。



収納のコツ


「蔵・倉・庫」を上手に使うためには、実は魅せる収納である「座」が大切な役割を果たします。


「座」にある物は、今、生かされている物ですが、「蔵・倉・庫」にある物は、いつか忘れ去られてしまう可能性があります。そして、「座」にある物を定期的に設えることは、「蔵・倉・庫」にある物を整理することにつながっています。


つまりモノの整理の手順は、表に出ている物のあるべき場所をしっかりと決めることから始まります。これは、各部屋にある分散した収納にも通じるコツになります。


さらに収納は、奥行から考えることも大切なコツのひとつです。


最も単純な例は、家具屋にある収納家具を見ればわかります。ほとんどの家具の奥行はおおよそ3パターンしかありません。


その奥行は、60cm、45cmと、薄型の30cmです。それは収納するモノが、ほぼこの奥行きで収まるということを表しています。


逆に、設計段階で作られることの多い一般的な奥行90cmの収納は、布団を入れる他は意外と使いにくいと感じている人が多いのです。それを考えれば、間取りで収納を検討する時にも、収納家具で考える方が合理的です。


さらには、ちょっとした扉や仕切りや棚を、後からつけるだけでも収納はできます。小さな図面の上であれこれと収納のことを考えるよりも、じっくり暮らしながら考える方が得策だということです。


それは集中収納の中を整理する時にも通じます。たとえ1間奥行の収納でも、工夫して家具を組み合わせれば驚くほどの収納量になります。


そして最後のコツは、まったく動くことがなくなったモノには、捨てる決意が大切です。これができない限りは、収納はあればあっただけ、常に足りないと感じてしまうものにしかなりません。


『フランス人は10着しか服を持たない』という本が発売され話題にもなりました。そこに書かれているテーマは、「暮らしの質を高める秘訣」です。このタイトルを見るかぎりは、決してモノが多いことが、質が高いことではありません。


断捨離という言葉もあります。モノを収めるのは家のつくりだけの要因ではなく、暮らし方の中にこそあるものではないでしょうか。

2018年4月2日月曜日

「家をつくる」ということ

家をつくるのはだれ?


家族のことを何よりも一番心配しているのは、母親であると答える人が多いのではないでしょうか。もちろん、父親も決して家族のことを忘れてはいません。幸せな家族の姿を思い浮かべるからこそ、これまでに稼いできた貯金を使い、さらにはローンを抱える決断をします。


ところで1980年7月に掲載されたアメリカの広告で話題になったものがあります。「世界で一番クリエイティブな仕事とは」という意見広告です。「全米を動かした75のメッセージ」という新聞への意見広告プロモーションの一環でした。まずは一度、下の原稿に目を通して見てください。




この広告では、「HOME MAKER」とは主婦のことを指しています。主婦の数々の仕事は、家事という一言ですむものではなく、ここに書かれているほど奥深い内容の仕事を手掛けます。まさに「家をつくる人」です。


今の時代なら、男女差別という人もいるかも知れません。でも、家では誰かが、これだけの仕事をしなければなりません。新築でもリフォームでも、家をつくるということは、ここにあるすべての項目を調べ、勉強を必要としているものなのです。


家族療法


家族の間で「家」について話すことが、使われている現場もあります。それは、臨床心理学の「家族療法」です。


アメリカでは約20数年前から、不登校や家庭内暴力などの子どもたちへのカウンセリングが行われてきました。


1970年代のアメリカは、今の日本と似たように個人主義の風潮が高まり、離婚率が増加し、家庭崩壊が社会問題となっていた時代です。


そのしわ寄せは、結果的に子どもに表れることも少なくありません。そのために不登校などの症状をみせる子どもと家族の悩みを解決するカウンセリングが行われるようになります。そのカウンセリングのひとつが「家族療法」です。現代の日本でも、この「家族療法」を実施されている先生がいらっしゃいます。


不登校や家庭内暴力を含めた子どもたちの悩みは、少なくとも原因が子どもだけにはないことの方が普通です。ですからカウンセリングで、子どもと話しても解決できないことがあります。母親と子どもだけが治療に通うのが適切とはいえません。


また、一時的に治ったように見えても、傷口を深くしてしまったり、再発の可能性を残していたりする恐れもあります。


「家族療法」では子どもといっしょに、母親も、もちろん父親も、家族でそろってカウンセリングを受けます。


もしペットを飼っていれば、ペットも連れて一緒にカウンセリングを受けます。ペットはもちろん人の言葉を話せませんが、ペットに対する家族それぞれの態度で、いろいろな側面や、問題点が見えてくることがあるのです。


子どもが自分以上に親がペットを大事にしているように感じたり、逆に自分がかわいがっているペットに虐待があれば、自分がその仕打ちをうけているように感じることで症状が出てくることもあります。こうした家族間の関係を大切にして治療に当たります。


マドリが聴診器になる


この「家族療法」の手法のひとつに、今の家の間取りを簡単に描き、日常的な生活のシーンを語り合うことを行ないます。家族それぞれが間取り図の中に、自分と家族のよくいる場所、あるいは自然と決められていると思われる場所にマークをします。できれば、ここでペットの居場所も書き入れます。


この作業をするのはカウンセリングを受ける子どもだけではありません。当然、一緒に来ている家族全員が行ないます。


その居場所をあらわすマークには、鼻がついていて、家族それぞれの顔ががどちらの方向を向いているかということをわかるようにします。


たとえば、子どもが父親から目を向けられていないと感じているというようなことが、この絵の中でわかるのです。そして家族の関係を互いに話しあうことで、それぞれの関係を確認することができるようになります。


なかなか自分自身のことでも、家族に対しての感情を表現することは難しいことです。また、自分は普通に平等につき合っていると思っていても、マークしてみると始めて、自分の中の微妙な気持を知らされることもあります。


家族の関係は、気づかないうちにつねに子どもたちの心の中に影響を及ぼしています。また子どもと両親との直接的な関係よりも、大人同士の関係が、子どもに大きな影響を及ぼすこともあります。


普通に暮らしていれば、間取り図など縁のないものと思っていませんか。でもカウンセリングとしての使い方一つで、家族の関係を診断し改善するためのツールになるのです。実際に診断に当たる医師からみれば、住んでいる家の間取り図は、まるで聴診器のようなものなのです。


家族の未来を語り合うこと


もうひとつ、家族で「おうち」の話しをすることで、大切な家族関係を築くツールがあります。


それは、家族みんなで協力しながら理想の「おうち」を粘土細工で造ってみることです。触っているだけで家族みんなが、優しい気持ちになるようにと、軽くて柔らかい紙粘土まで用意している専門医もいます。


この作業の中では、今ある家の姿ではなく、新しい家を家族で話し合って造り上げます。


もしかしたら家族で陣取り合戦のようになるかも知れません。でも、粘土であれば自由に増築してゆくことも簡単です。ワイワイガヤガヤと騒ぎながら進めてゆきます。


この一体の作業の中で、家族それぞれの夢が自然と語られ、家族に共有されるきっかけになります。そして家族の団結力が高められるのです。


こうして「家のかたち」を話し合ってみることで、家族間の気持ちを確認ができます。「家族療法」のこうした作業の中で、子どもの悩みを解決する療法としての効果が発揮されるのです。「家のかたち」は、まるでそのまま家族の状況を表
すことになるのです。


たとえ柔らかい優しい粘土がなくても、家族の間で「おうち」の使い方について話し合うことは、家族にとって大事なことです。それは新築の家を建てれば終わる話しではなく、リフォームを繰り返すことも、家族でしっかり話し合えば、いわばカウンセリングを受けていることと似ています。


もっと「おうちのはなし」を


この療法で話し合われる内容は、ほとんどの話しが、今そこにある家庭でのふるまいであると思います。間違いなく、家族が暮らしている「おうち」の中でのできごとです。


家族が「おうち」の中で行われていること、新しい「おうち」のことを話し合うことが、悩んでいる子どもたちのカウンセリングになっているのです。


もちろん療法は他にもあると思われます。でも、時々家族で「おうちのはなし」をすることの大切さが、おわかりいただけると思います。


逆にいえば、家というのは常に完成したものではありません。家族の姿も変われば、考え方も変わります。家に住んでいると、そのまま変わらないものと考えてしまいますが、それではもったいないことです。できれば意識をして、家を変えることを、家族で話してみることも、良さそうです。


結婚をし、子どもが産まれ、学校に入り、そして育ち、数々の卒業を迎え、いずれ巣立って行くそれぞれのシーンに、夫婦の考え方もあります。おそらく「おうちのはなし」は尽きることも無いでしょう。その都度に、最善の「かたち」を話し合うことこそが大切なのです。


今の家についてでも、また新しい家についてでも、家族の間でいつも「おうちのはなし」を続けてください。幸せな家族をつくる大事なコツのひとつです。

2018年3月26日月曜日

住宅のスケルトン

スケルトンとインフィル


この見出しの言葉を、どこかで聞いたことがありますか。建築の世界では比較的使われますが、決して一般的な言葉とはいえません。


少し前、スケルトンデザインとして外装が透明なパソコンが発売されて、よく聞く時期もありました。ただ、和製英語で、本来であればシースルーが正しい表現ということです。また、スケルトン見本といえば、骨格見本のことで学校には必ずあったものです。


さらにわかりにくいのはインフィルという聞きなれない言葉です。スケルトンとは対の言葉として使われているので、骨格以外は、すべてインフィルと考えます。家であれば、設備部品や内装材、さらには生活のために揃えられる家具もインフィルの一部です。


スケルトンがしっかりしていれば、内装や家具を変えながら長期にわたって住み継ぐことができます。持続可能で長持ちをする家を考えるときには、このスケルトンとインフィルを区分して考えることとしています。


さらに一般的には、仕上げや設備機器などの比較的寿命が短いものをインフィルとし、骨格だけではなく構造強度や断熱性などの性能もスケルトンと考えることが多いようです。


マンションで考えるとわかりやすいかもしれません。全面的なリノベーションをして、まったく新しい暮らし方を始めることができます。しかし、外装や窓の位置などを変えることはできません。それは区分所有のルールの中で定められていて、これがスケルトンとインフィルの境界となります。


すべてを所有する戸建住宅では、わかりにくくなります。たとえば、外装の仕上げ材には、タイルなどの長持ちする材料もありますし、耐震補強や省エネ改修など住宅の性能に関わる要素も、インフィルのように変えることができます。


たとえば、古民家が再生改修されるのには、現代生活に合わせた設備機器が設置され、インテリアを変えてリモデリングされるのはもちろんですが、耐震補強と、しっかりとした断熱材を充填して、住環境を整えることも行われます。つまり性能もインフィルになりうるのです。戸建住宅のスケルトンは、本来の意味通り、木材の柱や梁といった骨格そのものを指します。


家は、柱がなければ建ち上がらず、梁がなければ2階の床や屋根が掛からないことは、どなたでも想像ができるこだと思います。主に、次のような部材から成り立っています。



こうした部材が、国産材なのかそれとも海外からの輸入材なのかということが、取り上げられることも多くあります。


住宅のスケルトンの事情をよく知れば、理想的な設計や見積もり価格もわかるようになります。そして、設計事務所や建設会社を選ぶときの目安にもなるのです。


スケルトンの費用


 住宅の純粋なスケルトンが、骨格である柱や梁などの木材であるとしたら、はたしてどれくらいのコストがかかっているものでしょうか。


単純なイメージを聞くと、おおよそ500万円以上と答える人が多いようです。いわば建物の主要部分ですから、そのように考えるのも無理はありません。現実に建設費用の見積書の中ではどうなのでしょうか。


公正で中立な調査活動と情報提供を行なっている(財)経済調査会のホームページの中に、建設費用の事例が掲載されています。事例はいくつかありますが、これらの公開されている見積書の中でも、木工事は30%ほどで、まんざら間違いでもありません。


ただし、そのうちの組み立てや加工する労務費が半分を占め、純粋なスケルトンにかけられている費用は、事例から換算すると1坪あたり35,000~38,000円ほどです。つまり1棟の家でも、100~150万円ほどとなります。



こうしたスケルトンに使われる木材の価格は、国産材や無節や乾燥率などによって、大きな違いがあります。しかし施主が指定をしない限りは、建設会社に任されていることがほとんどです。高級住宅を建てたからといって、じつはスケルトンの費用は大きく変わるものでもありません。


大手メーカーの木造住宅では、供給を安定させるために、世界的に流通しているホワイトウッドなどの外材を使うことが多くなります。これらの材は比較的安価な材である上、さらに大量に買いつけることでコストを下げています。円高も木材の原価を下げることになっているはずです。


そのように考えると、本来はもっとも資産価値として残されるべきスケルトンですが、安価な材に高い費用を払っていることになりかねません。大手メーカーであればなおさら、しっかり聞いておきたいものです。


そして、木材の種類やグレードを聞けば、見積書を深く理解ができるようになります。きっと建設会社の選び方のポイントになるはずです。もし近隣に、建設現場を見かけたら、ちょっとスケルトンもゆっくり見てください。多くのスケルトンは、完成すれば見ることができなくなってしまいます。白くてきれいに見える木が、決して良いとは限りません。


古民家再生


また、意外と近くに見学できる古民家も、たくさん残されています。見比べてみると、住宅のスケルトンがずいぶん変わってきたことに気づかされると思います。


なによりも古民家では、家のスケルトンがそのまま見れます。古民家の柱や梁には、とても大きな木材が使われてきました。今の時代にこれだけの材を揃えようと思えば、相当の費用をかけなければなりません。再建築の費用を考え
れば、古民家には本当に大きな価値があります。


だからこそ古民家再生を願う人もいて、生まれ変わっている古民家も多くあります。


間面記法でできた家


古民家のスケルトンは、じつは設計の面でとても優れたものでした。


日本の伝統的な民家には、建設の際に単純なルールがありました。それは今の私たちが、「○LDKの家」と表現しているようなものです。昔の民家は、「○ 間(けん)○ (面めん)の家」という風に表現されていました。こうした表し方を「間面記法(けんめんきほう)」といいます。 「間」とは長さを表すものではなく、柱はしらま間の数を表します。


昔の民家は、煩雑な技術を避け、極めて単純な構造ででき上がっています。屋根をかけるためには、棟木を中心として両側に2本の柱を立て、棟柱との間にできた2つの柱間で空間を作ります。これが母おもや屋となります。



そして棟木を伸ばすようにしていくつかの柱間を並べることで、家の大きさが決まります。


柱間2つは小さな家で、柱間が4つも5つもあると豪邸となります。有名な三十三間堂は、この柱間の数が33ある御堂という意味です。


さらに間面記法の「面」とは、庇の出ている数を表します。昔の家の縁側のように、母屋に付属した空間ができます。母屋は単純な四角で建てられているので、「面」は最大、東西南北の4面までしか作ることができません。


前述の三十三間堂は、じつは外観から柱間を数えると35あります。それは両端の柱間は、「面」として作られているからです。つまり、間面記法で表せば、三十三間堂は、33間4面の建物となります。


このような間面記法で建てられた家は、平面図で見ると、碁盤の目のように柱が整列して建てられています。建てる時には、梁の長さなどが統一できるという合理性があることはもちろんですが、こうした単純なスケルトンだからこそ、世紀を超えたリノベーションも可能になります。デザインをリモデリングすることはもちろん、耐震性や高性能の家に生まれ変わることができるのです。間面記法で建てられた古民家は、理想的なスケルトンの見本です。


このようなスケルトンの見方ができるようになると、設計の良し悪しが判断できるようになります。柱や、特に梁の配置が複雑で無理があるほど、コストもかかり、リノベーションしにくい家になります。



スケルトンに資産価値を


家の骨格である柱や梁に使われている木材は、本当に数十年で価値のなくなるものになってしまうのでしょうか。


これまでにも記してきた通りインフィルの代表である仕上げ材や設備機器などは、年数を経るごとに損傷や故障が増え価値が低下してきます。だからこそ、メンテナンスに加えて、時には入れ替えも必要です。


また、住宅の性能に関わる部品も、性能が劣化するものもあれば、時には性能の基準そのものが変わる可能性もあります。たとえば断熱や遮熱の塗料が生まれてくるように、技術が進化することでも性能は変わります。


しかし、スケルトンに使われている木材は、基本的には100年以上の耐久性があると考えられています。現実に千年を超えた木造建築が残されています。


そればかりか、違法伐採や地球環境の保全などを考えれば、将来には木材は資源として貴重なものとなる可能性の方が高いといえます。木材が不足してくれば、さらに木造住宅を新築することは難しくなるかもしれません。スケルトンは、家の資産価値そのものとして考えられるようになるのではないでしょうか。


住まいづくりには、ほんとうにさまざまな情報があります。住み心地や使い勝手など、気になることも多いと思いますが、住宅のスケルトンも大切なポイントです。住まいづくりにお役立ていただければと思います。

2018年3月19日月曜日

住宅市場と工務店

信頼できる会社


国土交通省が調査し、公表している情報のひとつに、『住宅市場動向調査報告書』(平成28年度版)があります。全部で400ページを超える膨大な情報の中から、まずはひとつの項目を、ピックアップしてみましょう。


その項目は、下の図表にある「住宅選択の理由」です。建物や土地の評価、あるいはさまざまな条件も理由に上がりますが、トップは49.2%で「信頼できる住宅メーカーだったから」でした。



住宅を取得するのは、大きな買い物であるだけに、失敗は許されないと思います。そうであれば、この調査内容は、だれでも共感できるものだと思います。


ところで、この調査内容は「注文住宅」を取得した世帯への調査結果です。分譲住宅や中古住宅を選んだ理由となると、「信頼できる住宅メーカー」であることは、それほど高くはありません。


実際に現物を見ながら選び、売買契約によって取得される不動産物件と、請負工事契約によってこれからつくり上げる建築上の約束では、選び方の理由が変わるのも当然のことです。注文住宅では、なによりも信頼感が大事であるということです。


さらにこの調査の中では、施工者に対する情報収集方法も調査しています。51.2%の半数の人が、住宅展示場で情報を得ています。


住宅展示場に出展し、信頼感のある建設会社といえば、大手の住宅メーカーを思い浮かべる人も多いのではないかと思います。大手メーカーの名前は、テレビなどのコマーシャルでもよく耳にして知っています。


ところが、こうした全国規模で活動する大手住宅メーカーが、欧米にはほとんどなく、日本の住宅市場だけにあるものだと聞くと、意外に思うかもしれません。


新築が建てられている数や、中古住宅の流通、そして空き家率など、それ以外にも日本の住宅市場には特別な点があります。その中でも特別に、日本だけにある大手住宅メーカーは、どれだけの役割を果たし、本当の信頼を得ているのでしょうか。


じつはアメリカでも、一時期、国家規模の住宅メーカーを作ろうとする動きがありました。成功していれば、日本の住宅市場だけが特別なものにはなっていなかったのですが・・・


アメリカの挑戦


アメリカで国家規模の住宅メーカーを作ろうという活動は、オペレーション・ブレークスルーと呼ばれ、自動車産業がきっかけをつくったといわれています。


現代の日本が、働き方改革と称して、国全体の生産性を上げようとしていることと同じように、その頃、アメリカでも生産性向上は大きなテーマでした。工場生産ですでに効率を上げている自動車産業が、生産効率の悪い住宅産業に対して、国を動かして取り組んだのです。


このプロジェクトは、1970年代のことです。ちょうど日本にもプレハブ住宅が生まれた頃の取り組みでした。


ところが、アメリカのオペレーション・ブレークスルーは頓挫します。アメリカ政府は、住宅建設はドメスティックな地域企業が推進するものであって、国家的な住宅企業は必要ないと結論を下したのです。


プロジェクト全体の成否を考えるのは、難しいことですが、ちょっと考えてみれば、とても単純な理由が見えてきます。


大きな企業が取り組めば、大量に買いつけるか、あるいは生産するので、材料費は安くなるはずです。さらに工場生産を進め、施工が効率化されれば、労務費も削減できるはずです。つまり、国民には安くて質の高い住宅が、供給されるはずです。


ところが、現場での生産性向上の方が勝り、スケールメリットによるコスト低減の実現は、住宅では難しくなります。住宅の価格も明確で、資産価値としての評価がはっきりしているアメリカでは、結果的に消費者の信頼を勝ち取ることができなかったのです。


それは日本の大手住宅メーカーでも、まったく同じ状況になっています。住宅はさまざまな部材を使い、現場で組み立てて完成します。安く仕入れて、安く建てているはずの大手メーカーの方が住宅の価格が高いのは、資産価値として評価できない費用が含まれているからに他なりません。


資産としての厳しい目を持つ消費者がいるアメリカの住宅市場では成り立たないことも、日本では通用しているということです。


それは信頼に対するニュアンスの違いといっても良いかもしれません。資産が担保されることへの信頼と、企業イメージというぼんやりとした信頼感との違いです。先ほどの調査の中での企業への信頼感は、後者の可能性も考えられます。


でもほんとうに、日本では大手メーカーが信頼を獲得しているのでしょうか。



住宅建設の担い手


では実際に日本の住宅は、誰が建てているのでしょうか。


国土交通省のデータでは、市区町村別に毎月の住宅着工数が公表されています。しかし誰が建てているかまではわかりません。



2009年10月に住宅瑕疵担保履行法が施行され、すべての住宅建設企業が保険もしくは供託金を準備することになり、年2回の基準日に届け出ることが義務付けられました。これによって、全体像が見えるようになりました。


このデータから、日本で建てられている住宅戸数の、40%はわずか30社ほどの大手メーカーが建てているという記事が発表されたこともあります。


しかしこの記事には、戸建て注文住宅の他、建売住宅や貸家、マンションまで含まれています。後者になるほど、大手メーカーの比率が高いのですが、注文住宅こそ信頼できる企業が大事であると重ねて確認してきました。


これらの瑕疵担保履行法の公表数値と、住宅着工数から、現実の注文住宅市場のシェアを推計することができます。その平成25年度のデータが、国土交通省の資料の中にありました。その資料を読み解くと、現実の住宅建設の担い手がわかってきます。


平成25年度の注文住宅市場は、32万3千戸でした。この内、70%の22万4千戸が在来木造で建てられています。大手メーカーが手がけるプレハブ住宅のシェアは、年間6万1千戸で19%です。これは1社のシェアではなく、すべての
大手メーカーを足したものです。


近年では大手メーカーも在来木造を手がけています。また他にも2×4があり、わずかながら重量鉄骨やコンクリートもあります。


このデータによれば、在来木造のうち年間50戸以下の中小の工務店が建てている家が53.3%で、戸数にすると約12万戸となり、プレハブ住宅の倍以上の数です。さらに299戸以下の工務店であれば80%にもなります。


また、年間受注戸数による区分を、このデータ上では300戸以上供給している企業としてまとめています。瑕疵担保履行法から推計しても、全国で100社以上あり、1000戸以上供給している建設会社でも、全国ではなく一部の地域に限られた供給です。


つまり、これらのデータから読み取り推計する限り、注文住宅全体の7割以上が、地元で活動する工務店によって建てられているというのが事実なのです。



信頼の真意


もちろん、これは注文住宅におけるデータですから、請負工事契約によってこれから建設するという、もっとも信頼を大切にしているという調査報告と一致するものです。そして、この条件から、信頼とは何かということを伺い知ることができます。


少なくとも、大手メーカーだから信頼できると考えているわけではなさそうです。価格に優位性がなければ、それは不信感につながります。アメリカの国家的な住宅戦略が頓挫したことも根源的には一緒のことです。


さらに住宅展示場から情報を得ている人が多いという先のデータを考えると、なおさら大手メーカーへの価格への不信感には、根強いものがあると分析したくなります。


逆に限られた地域の中での信頼では、企業よりも人の顔が見えていることの方が大切です。


ある調査で自分の健康を預ける「かかりつけの医者」の条件が、新聞に発表されていました。


その結論は、次の通りでした。



なによりも、医師として腕が良いことは4番目の要素になってます。近くにいて、どんな相談もできて、それでいて説明が上手ければ、これ以上に信頼できる「かかりつけ医」はいません。


家も建てて終わりではなく、近くにいて見守ってくれる「かかりつけ医」のような存在が必要です。似たように注文住宅を建てた多くの方々が、「信頼できる住宅メーカー」として、現実には地域の工務店を選んできたということがデータに現れていたのではないでしょうか。


アメリカのオペレーションブレークスルーの試みを断念した、アメリカ政府は、理想とするホームビルダーのあり方をガイドブックの中にまとめました。ホームビルダーは、地域社会の中で人間的に信頼される存在になることと書かれています。


結果的には、日本もアメリカも住宅産業というのは、地域で活動している工務店によって支えられているということです。国土交通省が発表しているデータを冷静に分析すると、このような真実が見えてくるのです。

2018年3月12日月曜日

緑の同居パートナー

緑の同居者


新築祝いに贈られる物で人気なのは、おしゃれなキッチングッズや時計に加えて、観葉植物も多いようです。


とくに観葉植物は、インテリアの雰囲気を劇的に変えてくれます。もちろん、贈り物ではなく自ら選んだ花や植物を、インテリアのアイテムとして飾りつけている人も多いと思います。


観葉植物は生きているものですから、これからともに新しい暮らしを過ごす仲間として受け入れられるものです。面倒と思わずに、楽しみと思うと間違いなく暮らしは豊かになるでしょう。


ただ、水の与え方や、温度、日のあたり方によっては、植物の育ち方も違います。同じ家の中でも生長は変わるので、人間が気づかないような環境の違いを教えてくれるバロメーターにもなります。まさに植物は、緑の同居者です。


ところで、最初に、ちょっと特殊な肥料剤を紹介しておきましょう。特殊といっても、一般的なホームセンターなどでも普通に売られているものです。


それは、5ーアミノレブリン酸という成分で、ALAと呼ばれています。製品としては、「ペンタガーデン」として売られています。とても高価な製剤でしたが、生産方法が開発されて、ようやく手軽に手に入るようになりました。



じつは、このALAは、私たち人間の体内にも、そして植物の中にもあるものです。つまり、生物には欠かせない成分ということです。それを知ると、ますます植物も同じ仲間であると感じてきます。


ALAは、動物の体内では鉄分と化合して、赤血球のもとになります。体内の糖代謝を高めて、血糖値を下げてくれるという研究成果も発表されて、昨今では、人のサプリメントして注目されるようにもなりました。


また、ALAがコバルトと化合すると、ビタミン12となり、貧血予防や神経機能の正常化を促してくれます。さらには、睡眠リズムにも効能があるとされています。


この同じALAが、マグネシウムと化合すると、じつは葉緑素となります。動物にとって血液が大切なように、植物にとっての葉緑素は欠かすことができないものです。緑の同居者としての色の原点は、ALAにあるといっても過言ではないでしょう。


そして、植物にALAを与えれば、光合成の機能が向上することになります。農作物として収穫量を増やすことはもちろんですが、観葉植物のように、室内で、光にあたりにくい場所で育てるのに、とても適している成分なのです。


植物のいちばんの働きである、光合成が活性化して元気になれば、ともに暮らす仲間としての楽しみも大きくなります。植物の手入れなどは大変と思っている方には、ALAを知っておくだけで、ちょっと気持ちが前向きになります。



潤いのインテリア


観葉植物は存在感のあるインテリアとして楽しむだけではありません。同居者として、私たちにもいくつかの恩恵をもたらしてくれます。


たとえば、植物は葉の裏の気孔から、蒸散作用といって水蒸気を放出しています。植物の潤いは見た目の潤いがもたらされるだけではなく、現実に乾燥を和らげてくれています。


近年の住宅は、断熱・気密の性能が向上することで過ごしやすくなりましたが、その反面、昔の家に比べれば室内は乾燥する傾向にあります。インテリアに生きている観葉植物を置くことは、室内環境を整える意味で役立つのです。


また、一部の植物には空気中のホルムアルデヒドを吸着する役割もあります。家にはホルムアルデヒドを放出する材料の基準がありますが、他に家具などからも放出されています。


ゴムの木を代表とする、フィカス系の植物はホルムアルデヒドの吸着効果が高いといわれています。家の中で酸素をつくってくれるだけではなく、空気を浄化してくれています。植物は、住まい手の健康を守るためにも価値のあるということなのです。



観葉植物の選び方


ところで、花を飾るといえば、女性が好むイメージがありますが、鉢植えの観葉植物を選ぶのは、じつは男性であることが多いといわれています。インテリアのデザインを、白を基調にしてモダンにコーディネートし、サンセベリア系の直線的な植物で飾るのは、いかにも男性的な室礼です。


このような鉢植えの観葉植物を選ぶときには、何よりも置く場所を想定して置くことが最も大切なことです。場所によって、観葉植物の種類と大きさが決まってきます。


植物の種類は、置く場所の日当たりによります。十分な日光を必要とする植物なのか、それとも耐陰性に優れた植物かということです。明るさは次の4つに区分してみます。





葉緑素で光合成をして生長する植物にとって、光は欠かすことができないものです。しかし、すべての植物が直射日光を必要としているわけではありません。もともと生きてきた自然の環境でも同じです。シダ類などは、大きな樹木の茂る下草として生きられるように進化してきました。それを考えれば、レースカーテン越しの光で十分な植物はたくさんあります。


また、蛍光灯と白熱灯は、人工的な光の空間ですが、蛍光灯が灯る室内は、人が作業をするほどの光量があります。白熱灯の下であれば、よほど耐陰性の強い植物を選ばなければなりません。


いずれにしても、ベランダや庭で育てる植物とは違って室内に置く植物は、光により反応できるよう、前ページで紹介したALAなどを上手に使いこなしましょう。



観葉植物のサイズ


観葉植物のサイズは基本は鉢の大きさで分けます。直径20cmほどの7号鉢が中鉢で、直径30cmの10号は大鉢となります。ただし鉢のサイズがそのまま、植物の大きさや飾る時のサイズを表すものでもありません。植物の種類によっては横に枝葉が繁るものもあります。シダ類などは鉢が小さくても横に伸び、意外とボリューム感があります。


また、たとえ7号の中鉢でも、外鉢との組み合わせで、大鉢と遜色ない見せ方もできます。横に伸びる植物には、ちょっと高さのある外鉢を組み合わせると、十分に大鉢と同じような見栄えとなり、メインのグリーン・インテリアになります。


同様に横に伸びる植物を高い外鉢に入れ、上からスポットライトを当てると、葉影が壁や床に映ってライトの光などで影を楽しむことができます。


鉢は樹脂のものが多いのですが、外鉢は、籐を編んだ物や、焼き物、丸太をくり貫いた物など、探せば探すほどたくさんあります。こうした鉢を見つけてゆくことは、いわば観葉植物の洋服を見つけるようなものです。一気に揃えるのではなく、時間をかけて見て回り、探すのも良いことです。



ともに暮らすなかまとして


部屋で生長する鉢植えは、買って来たばかりの時よりも生長してきた時間を枝ぶりに感じられるほど、インテリアとしての印象が強くなります。たとえば幹が太いほど、風格が増し存在感が出ます。


また、エバーフレッシュというネムノキの一種は、昼は小さい葉をいっぱいに広げますが、夜になると葉をたたんで眠りにつきます。昼と夜の姿が一変することで、一緒に暮らしていることを実感できる植物として人気があります。さらに家主の習慣によって、エバーフレッシュにも夜更かしの癖がつくそうです。


一般的な観葉植物の変化は目立たないので、なかなか状況を理解してあげることは難しいことです。でも、サボテンとの会話を本気で実験しているとか、クラシック音楽を聞かせると実のなり方にも違いが出るという話しもあります。水をあげるだけのコミュニケーションではなく、声をかけ、一緒に暮らすなかまとしての絆を結びたいものです。



インテリアとしての植物


最後に根付きの観葉植物の他に、お花屋さんで手に入れてくる、まさにインテリアとしての植物についても触れておきましょう。


お花屋さんに行けば、いつもきれいな花が並んでいます。季節によって違う花もありますが、今では一年中置かれている花もたくさんあります。


切り花を飾るのは日頃の生活の中で多く見かけられることですが、ゲストが来る時などには、枝物の花を飾るという新しい挑戦をしてみてはいかがでしょうか。枝物を扱っている店はあまり多くありませんが、たとえば桜や桃、ハナミズキ
などです。


桜や紅葉の時期になると、桜前線が北上し、紅葉前線は南下するニュースが流れます。またソメイヨシノや八重桜など、種類によっても開花の時期は微妙に違います。桜は南の地域から、そして紅葉は北の地域から取り寄せれば、季節を先取りして部屋に飾ることができます。南北に長い日本の地理と、発達した流通があるからこそできる花の楽しみ方です。


もちろん花屋さんの枝物は、専用に栽培されたものですから環境への心配をしないで使えます。街中ではまだ咲いていない桜の花が、あなたの家の中で咲いているのを見れば、ゲストもきっと感動するでしょう。


また、枝物は花だけではなく葉を楽しむこともでき、1年を通じて飾ることができます。新芽の時期には、葉が芽生える頃からの生長を見ることができます。


枝物を上手に飾るコツは、頭の中に描いている以上に大きく大胆に飾ることです。これらの枝が大樹の一部であるという思いが巡らされれば、その感動はさらに大きくなることでしょう。