緑の同居者
新築祝いに贈られる物で人気なのは、おしゃれなキッチングッズや時計に加えて、観葉植物も多いようです。
とくに観葉植物は、インテリアの雰囲気を劇的に変えてくれます。もちろん、贈り物ではなく自ら選んだ花や植物を、インテリアのアイテムとして飾りつけている人も多いと思います。
観葉植物は生きているものですから、これからともに新しい暮らしを過ごす仲間として受け入れられるものです。面倒と思わずに、楽しみと思うと間違いなく暮らしは豊かになるでしょう。
ただ、水の与え方や、温度、日のあたり方によっては、植物の育ち方も違います。同じ家の中でも生長は変わるので、人間が気づかないような環境の違いを教えてくれるバロメーターにもなります。まさに植物は、緑の同居者です。
ところで、最初に、ちょっと特殊な肥料剤を紹介しておきましょう。特殊といっても、一般的なホームセンターなどでも普通に売られているものです。
それは、5ーアミノレブリン酸という成分で、ALAと呼ばれています。製品としては、「ペンタガーデン」として売られています。とても高価な製剤でしたが、生産方法が開発されて、ようやく手軽に手に入るようになりました。
じつは、このALAは、私たち人間の体内にも、そして植物の中にもあるものです。つまり、生物には欠かせない成分ということです。それを知ると、ますます植物も同じ仲間であると感じてきます。
ALAは、動物の体内では鉄分と化合して、赤血球のもとになります。体内の糖代謝を高めて、血糖値を下げてくれるという研究成果も発表されて、昨今では、人のサプリメントして注目されるようにもなりました。
また、ALAがコバルトと化合すると、ビタミン12となり、貧血予防や神経機能の正常化を促してくれます。さらには、睡眠リズムにも効能があるとされています。
この同じALAが、マグネシウムと化合すると、じつは葉緑素となります。動物にとって血液が大切なように、植物にとっての葉緑素は欠かすことができないものです。緑の同居者としての色の原点は、ALAにあるといっても過言ではないでしょう。
そして、植物にALAを与えれば、光合成の機能が向上することになります。農作物として収穫量を増やすことはもちろんですが、観葉植物のように、室内で、光にあたりにくい場所で育てるのに、とても適している成分なのです。
植物のいちばんの働きである、光合成が活性化して元気になれば、ともに暮らす仲間としての楽しみも大きくなります。植物の手入れなどは大変と思っている方には、ALAを知っておくだけで、ちょっと気持ちが前向きになります。
潤いのインテリア
観葉植物は存在感のあるインテリアとして楽しむだけではありません。同居者として、私たちにもいくつかの恩恵をもたらしてくれます。
たとえば、植物は葉の裏の気孔から、蒸散作用といって水蒸気を放出しています。植物の潤いは見た目の潤いがもたらされるだけではなく、現実に乾燥を和らげてくれています。
近年の住宅は、断熱・気密の性能が向上することで過ごしやすくなりましたが、その反面、昔の家に比べれば室内は乾燥する傾向にあります。インテリアに生きている観葉植物を置くことは、室内環境を整える意味で役立つのです。
また、一部の植物には空気中のホルムアルデヒドを吸着する役割もあります。家にはホルムアルデヒドを放出する材料の基準がありますが、他に家具などからも放出されています。
ゴムの木を代表とする、フィカス系の植物はホルムアルデヒドの吸着効果が高いといわれています。家の中で酸素をつくってくれるだけではなく、空気を浄化してくれています。植物は、住まい手の健康を守るためにも価値のあるということなのです。
観葉植物の選び方
ところで、花を飾るといえば、女性が好むイメージがありますが、鉢植えの観葉植物を選ぶのは、じつは男性であることが多いといわれています。インテリアのデザインを、白を基調にしてモダンにコーディネートし、サンセベリア系の直線的な植物で飾るのは、いかにも男性的な室礼です。
このような鉢植えの観葉植物を選ぶときには、何よりも置く場所を想定して置くことが最も大切なことです。場所によって、観葉植物の種類と大きさが決まってきます。
植物の種類は、置く場所の日当たりによります。十分な日光を必要とする植物なのか、それとも耐陰性に優れた植物かということです。明るさは次の4つに区分してみます。
葉緑素で光合成をして生長する植物にとって、光は欠かすことができないものです。しかし、すべての植物が直射日光を必要としているわけではありません。もともと生きてきた自然の環境でも同じです。シダ類などは、大きな樹木の茂る下草として生きられるように進化してきました。それを考えれば、レースカーテン越しの光で十分な植物はたくさんあります。
また、蛍光灯と白熱灯は、人工的な光の空間ですが、蛍光灯が灯る室内は、人が作業をするほどの光量があります。白熱灯の下であれば、よほど耐陰性の強い植物を選ばなければなりません。
いずれにしても、ベランダや庭で育てる植物とは違って室内に置く植物は、光により反応できるよう、前ページで紹介したALAなどを上手に使いこなしましょう。
観葉植物のサイズ
観葉植物のサイズは基本は鉢の大きさで分けます。直径20cmほどの7号鉢が中鉢で、直径30cmの10号は大鉢となります。ただし鉢のサイズがそのまま、植物の大きさや飾る時のサイズを表すものでもありません。植物の種類によっては横に枝葉が繁るものもあります。シダ類などは鉢が小さくても横に伸び、意外とボリューム感があります。
また、たとえ7号の中鉢でも、外鉢との組み合わせで、大鉢と遜色ない見せ方もできます。横に伸びる植物には、ちょっと高さのある外鉢を組み合わせると、十分に大鉢と同じような見栄えとなり、メインのグリーン・インテリアになります。
同様に横に伸びる植物を高い外鉢に入れ、上からスポットライトを当てると、葉影が壁や床に映ってライトの光などで影を楽しむことができます。
鉢は樹脂のものが多いのですが、外鉢は、籐を編んだ物や、焼き物、丸太をくり貫いた物など、探せば探すほどたくさんあります。こうした鉢を見つけてゆくことは、いわば観葉植物の洋服を見つけるようなものです。一気に揃えるのではなく、時間をかけて見て回り、探すのも良いことです。
ともに暮らすなかまとして
部屋で生長する鉢植えは、買って来たばかりの時よりも生長してきた時間を枝ぶりに感じられるほど、インテリアとしての印象が強くなります。たとえば幹が太いほど、風格が増し存在感が出ます。
また、エバーフレッシュというネムノキの一種は、昼は小さい葉をいっぱいに広げますが、夜になると葉をたたんで眠りにつきます。昼と夜の姿が一変することで、一緒に暮らしていることを実感できる植物として人気があります。さらに家主の習慣によって、エバーフレッシュにも夜更かしの癖がつくそうです。
一般的な観葉植物の変化は目立たないので、なかなか状況を理解してあげることは難しいことです。でも、サボテンとの会話を本気で実験しているとか、クラシック音楽を聞かせると実のなり方にも違いが出るという話しもあります。水をあげるだけのコミュニケーションではなく、声をかけ、一緒に暮らすなかまとしての絆を結びたいものです。
インテリアとしての植物
最後に根付きの観葉植物の他に、お花屋さんで手に入れてくる、まさにインテリアとしての植物についても触れておきましょう。
お花屋さんに行けば、いつもきれいな花が並んでいます。季節によって違う花もありますが、今では一年中置かれている花もたくさんあります。
切り花を飾るのは日頃の生活の中で多く見かけられることですが、ゲストが来る時などには、枝物の花を飾るという新しい挑戦をしてみてはいかがでしょうか。枝物を扱っている店はあまり多くありませんが、たとえば桜や桃、ハナミズキ
などです。
桜や紅葉の時期になると、桜前線が北上し、紅葉前線は南下するニュースが流れます。またソメイヨシノや八重桜など、種類によっても開花の時期は微妙に違います。桜は南の地域から、そして紅葉は北の地域から取り寄せれば、季節を先取りして部屋に飾ることができます。南北に長い日本の地理と、発達した流通があるからこそできる花の楽しみ方です。
もちろん花屋さんの枝物は、専用に栽培されたものですから環境への心配をしないで使えます。街中ではまだ咲いていない桜の花が、あなたの家の中で咲いているのを見れば、ゲストもきっと感動するでしょう。
また、枝物は花だけではなく葉を楽しむこともでき、1年を通じて飾ることができます。新芽の時期には、葉が芽生える頃からの生長を見ることができます。
枝物を上手に飾るコツは、頭の中に描いている以上に大きく大胆に飾ることです。これらの枝が大樹の一部であるという思いが巡らされれば、その感動はさらに大きくなることでしょう。