ノーベル医学生理学賞受賞した山中伸弥先生のiPS細胞が、いよいよ難病の臨床実験へ進む段階になりました。専門に勉強していないと、なかなか理解することはできませんが、医療が新しい時代になるのだと実感します。
患者の一部の細胞からiPS細胞を作り、細胞レベルで患部と同じ症状が生まれる原因を探れば、治療方法が見えてきます。ニュースになったFOPという難病は、筋肉が骨になってしまう病気です。遺伝情報がリセットされたiPS細胞はもちろん、筋肉細胞の中にも骨になる遺伝子情報があるのです。
全体の中の一部でありながら、その一部の中に全体の情報が含まれている。こうした全体子の仕組みは遺伝子だけではなく、サスティナブルな組織体には有効なものです。
話は飛びますが、日本の家がどのようになってゆくのかも、全体子の中に委ねられているのかもしれません。世界中には地域によって違う家が建てられていて、日本もその例外ではありません。
日本を訪れる観光客も、京都などの日本的な住環境に触れて感動する一方、建てられる家には、日本的な要素が減りつつあります。
こうした日本の家の伝統を保持しているのは、大手企業よりも全国に散在する地域の工務店です。すべての工務店が日本の家を建てられなくなった時には、日本の家も失われることになるでしょう。
また、私たちの生活スタイルの中にも、同じように日本の生活様式が染みついています。障子や畳があるだけでも日本の家と感じることができます。こうした住まい文化が失われても、日本の家の存続は難しいでしょう。
地域の工務店と住まい文化は、いわば遺伝子のようなもので、日本の家がこれから未来にわたって、残されてゆくか否かに関わっているということでもあります。