2018年2月26日月曜日

二世帯・三世代住宅−同居型住宅のメリットとデメリット

核家族の二世代住宅


西欧の街並みを見ていると、独立した戸建ての家が普及しているようには見えません。どんなに地方であっても、標準的な家は大きな三階建てが多く、暖炉を表す煙突の数も、屋根の上には複数本が立っています。一方、日本ではすっかり核家族の家が普及しました。


こうした家のカタチには、三世代住宅や二世帯住宅があります。でもちょっとわかりにくい言葉です。


祖父母と子ども、そして孫の三世代が暮らす家が三世代住宅です。つまり三世代住宅とは、家族構成を表しています。


それに対して、二世帯住宅は、祖父母世帯と子ども夫婦世帯が、分かれていることで暮らし方を表します。


近年になって、この二世帯•三世代住宅が少しずつ増え始めています。それは日本だけの話ではなく、同じように核家族化が進んできたアメリカでもいわれていることです。


昨今のアメリカンドラマでも、家族三世代の物ストーリー語になっています。その上、統計上でも三世代で暮らす家族が19%に達したというデータもあります。


日本の内閣府の調査でも三世代同居希望者は20%を超え、三世代同居もしくは近居を推進する税制や補助金の政策を国は施行しています。



日本の社会問題


戦後70年を超え、日本の家族像も大きく変わってきました。その変化に合わせて家もやはり変わってきました。そして今、家族も家も、さまざまな問題を抱えています。


住宅は絶対的に量が足りない時代から、今では全世帯数に対して、15%近く余る時代になりました。それは空き家問題として取り上げられています。中でも空き家率が高いはずの貸家は、持ち家以上に建てられ続けています。


また、地球温暖化が世界的な問題となり、エネルギーを浪費する家も減らさなければなりません。消費するだけではなく、太陽光発電で再生可能エネルギーを創り出す住宅を進めるために、ZEH(ゼッチ)住宅が推進されています。


他にも日本では、これまでに大きな地震も経験し、まだ20%もの住宅の耐震性が足りていないことがわかっています。100万戸近い家が毎年新築されていても、日本の住宅ストックは、そんなに急には変わることはできません。


日本が抱えている問題は、住宅問題だけではありません。


その代表例は、高齢化の問題です。高齢者の割合が増えて、医療に始まり介護問題があります。反面、人口減を招いている少子化も大きな課題です。待機児童の問題や働き方改革を進めるための男女平等雇用の問題もあります。


その上、都市への人口の集中には歯止めがかからず、地域活性化も大きなテーマです。このように書き並べてみても、日本の社会問題は山積しています。


このすべての問題を、一気に解決してくれるのが、じつは三世代住宅なのです。


新しく建替えればもちろんのこと、リフォームでも、最新式の省エネ住宅になり、耐震性も上がります。高齢者が、子ども家族のそばに住むことで健康や介護に目が届きます。逆に共働きの多い子ども世代の子育てを、祖父母世帯が手伝うこともできます。


そして、しっかりとした三世代住宅を整備するということは、家族が今の地域に住み続けるのを決意していることでもあります。人が住み続ける限り地域が廃れることはありません。


これらのことを考えると、国が三世代住宅を推進するのもよく理解できます。そして家族にとっても、より幸せな暮らし方になるはずです。



二世帯住宅の定義


国が進めている三世代同居を考える家族にとっては、具体的な住宅のカタチが気になるところです。この時に初めて、二世帯住宅という家の形態がテーマとなります。


たとえば近居であれば、2戸の家が必要になります。それだけコストがかかるのは、明白なことです。


同じ敷地内に暮らす同居の場合でも、完全な同居から完全な別居まで、さまざまなスタイルが考えられます。


国が定める新築もしくはリフォームの補助金の対象となる三世代住宅の条件は、次の部位のうち、2つ以上が設置されていることとしています。


この基準がいわば、二世帯住宅の定義となります。玄関が2つあれば外から見ても、二世帯が暮らしているであろうことはわかります。しかし玄関が1つでも、その他の設備が2つあれば三世代が住む二世帯住宅とみなされます。


ごく普通に住宅街を歩いていても、玄関先に2つの表札が並んでいる家を意外と多く見かけます。また、住宅メーカーのデータでも、およそ8軒に1軒の割合で二世帯住宅が建てられています。


こうした二世帯住宅の暮らしぶりを理解するためには、それぞれの部位の分離と共有を、暮らしのメリット・デメリットとして考えてみるのが良いと思います。

■キッチン

調理場が2つあるのは、最も象徴的な二世帯住宅の特徴です。キッチンが2つあれば、世帯が分かれていることが実感できます。世代が違えば食べるものも違い、さらには食べる時間も違います。


また、キッチンは家族の作業分担が問われる場所でもあります。調理の仕方や調理する時間帯ですれ違いが生まれ、家族間の不満を生み出すきっかけとなりかねません。


まったく同等のキッチンを作るのではなく片方のキッチンを大きくして、もう1つをミニキッチンにすることも良くあります。


さらに、三世代住宅では、親戚や縁者が集まる傾向もあります。大勢の人が同時に立てる広めのキッチンも、二世帯住宅では必要とされる空間かもしれません。


一方、キッチンは住宅の中でも高価な設備の1つです。2つあれば設置の費用もかかり、食材や調理のためのエネルギー消費などでも出費がかさみます。

■浴室トイレ

浴室やトイレは、家の中で最も1人になれる場所であり、世帯に専用の浴室・トイレをつくるのも二世帯住宅の常道です。


また、生活音が最も気になるのも、この水回りです。上下階で住み分けるときも、横で棲み分けるのも、できれば他方の居室のそばに配置しないなどの配慮が必要です。


しかし一方、水回りは幼い子どもや高齢者の命につながる事故が発生している場所でもあります。同居家族で共有すると、このような事故を防ぐことや軽減ができるかもしれません。


日本の家庭の消費エネルギー量では、冷暖房よりも給湯がいちばん多くなっています。当然のことながら、浴室を共有することのメリットは、この安全性と経費の節減です。

■玄関

玄関が2つあれば、世帯が分かれていることは明確です。完全に分離した二世帯住宅を求める時には、玄関を別にしなければできません。親子の関係でも互いのライフスタイルを尊重する気持ちが二世帯住宅をつくります。


しかし、玄関は別でも、内側の通路でつながっている事例もよく見かけます。その意味では、内部の通路が有るか無いかで、三世代の家族の関係は大きく変わります。



分離するのが基本


最終的に、どこを共有するかを決めるのは、家族の話し合いです。すでに三世代で住んでいれば問題は少ないかもしれませんが、新しく住み始める場合は、実際に住んでみなければわからないこともたくさんあります。しかも、その多くが、人間の感情にも絡むことです。多くの家庭を見る限りは、できる限り分離して考えておくことが基本のようです。時には間を置きたいと思う瞬間があるのも普通のことと考えれば自然のことです。


大は小を兼ねるといわれますが、分離していてもつながりを維持するのは意識すればできることです。


また、介護が必要になった時にも、親世帯の家に範囲を限定して改装することもできます。


他にも、息子夫婦と暮らすのか、娘夫婦と暮らすのかによっても、同居の形態には傾向があります。嫁が新しい家に入る息子夫婦との同居では、大きく分離する傾向にあります。逆に娘夫婦として婿を迎える同居では、比較的分離の傾向が少なくなります。家のことは女性が中心とは、よくいわれることですが、女性の負担が少なくなることが基本になっているようです。



税制のメリット


ところで、三世代住宅で同居することの最大のメリットは、じつは税制にあります。それも、相続税が有利になるというものです。


相続税については、2015年に大きく改正が行われ、相続税を納めなければならない人の数は倍近くに膨れ上がりました。片親が残る場合では、あまり心配はありませんが、親子間の相続税では、亡くなった人の5人に1人が相続税納付の対象になっているほどです。


その相続税評価について、家と土地は大きな要素となります。親の住んでいた家を相続する場合には、土地の評価額の80%が減額される制度があるのです。都市部はもちろんのこと、地方でも相応に面積が大きいことを考えれば、影響の大きい制度です。


具体的な内容は、「小規模宅地の特例」といわれるもので、住宅地の場合は次のような条件があります。

1.親の居住用の宅地で有ること。
2.日本国籍を有していること。
3.親子間の相続であること。
4.同居していた他の相続人がいないこと。
5.対象宅地を申告時まで所有していること。
6.相続発生前の3年以内に、相続人が居住用の家を所有し居住していないこと。

この特例でも、やはり2015年にこれまでとは違う方針が示されました。相続税という制度で、国は三世代住宅を推進しようと考えていることは間違いありません。


例えば、対象となる土地の面積の上限は330㎡ですが、これも2015年の改正で、居住用の土地だけが面積が拡大されました。


また、世帯が完全に分かれている二世帯住宅でも、敷地全体が対象となりました。2015年に以前では、どこかでつながっていなければ、親の住宅面積との比率で決められていました。


ここで最も注意しなければならないのは、最後の6番目の条件です。子ども世帯が別に家を所有して3年以内に居住していると、同居の意思がなかったとみなされて減額の権利がなくなります。しかもそれは、配偶者の所有でもだめです。


たとえば、奥様の親が亡くなり相続税が発生した時に、ご主人名義のマンションに3年以内に住んでいた実態があれば、その親の土地は全額相続税対象となってしまうのです。


逆に、子どもが独立して結婚をしたので、新しい家を求めるというケースがあれば、その時には、その若夫婦のどちらの親も、現在の家の相続税評価額を検討しておく必要があるということでもあります。


単純に新しい家を求めるよりも、親の家を建替えて、二世帯住宅にした方が、ずっと賢明な選択になる税制が施行されているということです。今では、住宅取得資金贈与を使えば、さらに相続税対策になります。


家を検討する時には、ぜひ、二世帯住宅も頭の片隅に入れておいてください。