2017年10月23日月曜日

コンクリートの爪痕

飛行機の窓から地上を眺めると、山肌の中にいくつものゴルフ場が見えます。深い森のなかに傷つけられた爪痕のように見えます。これを見ると、ゴルフ場が決して環境に良いものとは思えません。


でも、同じ空から見たゴルフ場の風景でも、アメリカラスベガスの上空では、砂漠の中につくられたオアシスのように見えます。こうなるとゴルフ場は、立派な環境づくりだと思えます。


それはゴルフ場ではなく、農園でも同じことがいえます。原生林が刈り取られて、人間の畑として開発されると、たとえ空から見て緑に覆われた大地であっても、人の爪痕になります。人口を支えるための食料確保はなくてはならないものですから、難しいものです。


また人が築いた都市も、いわば砂漠化の一環です。コンクリートジャングルは気候の変化まで生み出しています。空から地上を見下ろせば、傷痕にしか見えないでしょう。せめて屋上緑化をすることは、地球に対する礼儀のようにも思えてきます。


福岡にあるアクロスビルではこの試みが成功しています。20年をかけて屋上庭園は成長しました。鳥が運んできた実生の樹木が育ち、当初植えられた樹種の倍近くになっています。まさに、コンセプト通りに本物の山のようになっているのです。





たとえアクロスビルと同じものを作ろうとしても、すぐにはできません。また、周辺の山々の植生も大きく関わってきます。人間が生み出してきた技術にも色々とありますが、コンクリートの爪痕を癒す、自然と共生した技術は、建物に活かしてゆきたいものです。