庭との関係を考えて家を建てる時、私は里山とオーストラリアで出会った話を思い出します。
「一本の木から家を建てる・・・」
もともとそこにあった樹を生かし家を建てるという贅沢なものです。
樹は100年、200年の時間を持ち、季節を語り多くの生き物や人を生かし集めます。又その木の下にも多くの人が集まるように心地よい空間にもなります。
そこで、植栽を考えるときには、できるだけ住宅に思い切って近づけて植えるテクニックも大事です。その植木を避けるようにして住宅が建っているかのような演出ができ、住宅が豪華に見えます。オーストラリアの様に敷地が広いと、もともとあった林の木を間引き、半日蔭の庭空間を生かすとか、裏庭にも大木の一本の木を生かして、デッキやハンモックの空間などを設計し、心地よいリビングガーデンを作っているのを見かけたことがあります。
一本の木は夏の暑さから守り、冬は光を通しあたたかく見守り、環境にやさしいパッシブ住宅としての機能的な役目も果たしてくれます。住宅の省エネや心地よさの大切な要素です。
もう一つは建物を美しく価値あるものに見せるには、樹木の植え方見せ方によってより大きく変わります。建築の出隅や入り隅に緑を入れ込むと家がそこから生えていたように見え、とても美しく見えます。建物に近く木を植えると、見た目も住まい心地も、何より住宅の家と庭の一体化による価値が上がります。
工業型の無機質な物だけでは人は安らぎや美しさや調和を感じません。季節の移ろいや木の持つ姿や安心感、何より成長していく楽しみや変化、光の揺らぎや鳥などを呼ぶ力、そして四季にわたり彩が変わり、できるだけ室内から見えるようにすると、まるで森に住んでいる心地よさも味わえます。
たくさん植えるのでなく、そっと住宅や屋内から見て美しく見える形に木を植える。住宅は共に人生や時間を過ごす居住空間であることにこだわりたいものですね・・・