なにか事件が起きた時には、原因が追求されます。因果を気にするのは人間の特徴です。原因が自然の力だと思えば、受け入れて復興を目指します。また、原因が解れば、次の事件が起きないように予防をすることもできます。
生活習慣病も、その名の通り毎日の食事や運動の量が原因となって発生する病気です。薬による治療よりも、日常の注意が最も有効です。
また交通事故の死者数が格段に減ってきたのも、こうした原因分析が培われてきたからではないでしょうか。シートベルトの義務化や、飲酒運転の厳罰化が功を奏してきました。
ところが、交通事故死者数が減っても、しばらくは交通事故の数は増えていました。つまり死亡者を減らす原因や対策と、事故を減らす原因や対策は違うということです。昨今の自動車は、AI技術を使って事故を起こさない対策に向かっています。
ところで、家の中でも起きる家庭内事故の原因はどのようなものなのでしょうか。なかなかデータを調べるのも難しいことです。
医学会の「乳幼児の事故調査」(東京都母子保健サービスセンター)によると、原因としては「大人の不注意」が85%、「建物の不備」は18%とあります。
また建築学の調査結果では、本人もしくは他の人の過失に因るものが合わせて7割で、建物の不備は21%です。
いずれにしても建物に原因があるのは2割ほどです。これは決して少なくない数値で、できれば家を考える際には安全には万全を期したいものです。家をつくる社会にとっても、取り組まなければいけない命題です。死亡者の数だけではなく、隠れた事故の数を考えればなおさらです。本当の安全と安心の家は、家庭内事故を無視して実現できるものではありません。