自然にできた洞窟を住処としていた時代から、やがて人は自分で巣をつくるようになります。巣をつくる動物なら、人間の他にもたくさんいます。人の場合は、その巣が進化をして、住まいと呼べるものになります。その段階で、多くの場合は人は樹木を活用しています。たとえば樹木の幹を、柱や梁に使うのです。
日本のように木材が豊富な国では、潤沢に木材が手に入ります。石や土で壁を固めたような地域でも、貴重な木材を運んできて、屋根をかけるのに使っている遺跡がたくさんあります。
やがて、この便利な材料である木材を、人は自分の手をかけて育て、より活用に適したように加工します。
もし、近くに木材の年輪を見ることができたらとても単純な観察をすることで、その片鱗を知ることができます。年輪は中心部ほど密度が粗く、早く生長していることがわかります。ところが、5~10年目ほどから、急に年輪の幅が小さくなり密度が詰まります。
それは、人が枝打ちをすることで葉が落とされ、光合成の効率が落ちて、生長が遅くなった証拠です。枝打ちというのは、強い木材をつくるために人が樹木に施している加工なのです。
その加工の極みといえば、盆栽ではないでしょうか。植林以上に手間をかけ、時には木を裂いて曲げて負荷を加えて育てます。植物はまったく文句をいいませんが、丁寧に扱えばしっかり応えてくれます。その意味では、人間と植物のコミュニケーションの結晶が、盆栽なのです。
日本の伝統の盆栽は、芸術品として海外の人に高値で取引されています。植物とのコミュニケーションは、とてつもなく価値のあることなのです。